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Kitchen Hypothesis

キッチン仮説。料理の「なぜ」を追求するレシピを紹介していきます

ハンバーグレシピ更新しました。

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http://allabout.co.jp/otokichi/recipe/1-1/1556/

男のハンバーグ道』のレシピについては肉好きからは概ね好評なのですか、肉っぽすぎる。アツアツの時はジューシーだが、冷めると固くなる、いわゆるふわっとした、昭和の洋食的なハンバーグらしさは足りない、という意見も頂きました。


そこで考えたレシピがこちら。肉の美味しさを存分に味わえると同時に、ふんわりと柔らかく、なおかつ臭みやくどさを排除し、肉汁はしっかり保持して、冷めても柔らかいハンバーグになりました。

ポイントは書籍で書いた牛乳使いや焼き方以外に、肉を下ごしらえの段階で脂溶性のアクや不快臭をもたらす成分をしっかりと取り除くこと。
そしてふっくらさせるために使う麩(通常はパン粉ですが、ここでは麩を使っています)に、先に卵液をしみさせてしまうこと。これによって、麩(パン粉)に脂やアクが染み込むことを、防ぎます。

これによって肉汁をたっぷり含んでかつ、くどさがなく、肉本来の美味しさをを堪能できるうえにふっくらと柔らかいハンバーグにすることができました。

重版出来!

重版出来(じゅうはんしゅったい、と読みます)。


本日の日経新聞2面に広告が出ております。発売後一月のうちに、2度も広告を出してくれるなんて、感謝感激です。まあ、日経新聞社系版元ならではなのでしょう。先月発売の日経プレミアシリーズは3冊とも重版がかかった模様。残りの2冊はともに前作が売れた、売れ筋本です。

もしわたしの本だけ重版がかからなかったら……、と思うと、すこしぞっとしますが、ともあれ、売れ行きも上々でありがたいことです。

来週は編集者と重版祝い兼販促戦略会議の予定。おいしいお酒がのめそうです。

 

男のパスタ道 (日経プレミアシリーズ)

男のパスタ道 (日経プレミアシリーズ)

 

 

パスタと塩析

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『男のパスタ道』は、原稿を書きすぎてしまったため、数万字を削ったのだが、そのなかでも、最後まで本に入れられないものか、と悩んだのが、「パスタにおける塩析問題」だ。

ゆで汁に塩を入れる理由についてインターネットで検索すると、「塩析」という言葉がよく出てくる。いわく、「塩析によって、パスタのタンパク質が溶けてグルテンが残り、コシが出る」。あるいは、「塩析でパスタ表面のタンパク質を溶け出しにくくしてコシを強くする」、「塩析でパスタを引き締める」などなど。

私の化学の知識が付け焼き刃なせいかもしれないが、これらの説明には、どうにも納得できない。まず「タンパク質を溶かしてグルテンを残す」というが、本にも書いたように、に、グルテンこそ、パスタのタンパク質の9割を占めている。仮にグルテンを溶かしたとしたら、パスタにコシが出なくなってしまうだろう。

「タンパク質を溶け出しにくくする」についても、グルテンはそもそも不溶性だ。もともと溶けないのである。もしかしたらグルテンのことではなく、アルブミン、グロブミンなど、パスタに含まれるほかの水溶性タンパク質に言及しているのかもしれないが、それとコシにどう関係があるのか。 そして、そもそも「パスタを引き締める」とは、いったいどういう意味なのか? 文系人間の私からしても、科学的とはいえない解説に見える。

唯一あるかもしれないと思ったのは、ウィキペディア日本版のパスタの項目にある「表面がうどんのようにぬるぬるするのを防ぐ(化学用語で塩析という現象)」という記述だが、実はこの説明もかなりあやしいように思う。

塩析とは、簡単に言うと、コロイド粒子を塩の電解質によって塊にし、分離することだ……と言っても何のことか分からないと思うので、まずはコロイド粒子について説明する。

コロイド粒子とは、直径がだいたい100ナノメートル以下、あるいは原子数が10の3乗から10の9乗ほどの細かい粒子のこと。これが例えば液体の中に分散していると、すぐには沈殿せず、長い時間安定した状態となる。コロイド粒子は液体だけではなく、個体や気体の中に分散していることもあり、これらをまとめてコロイド分散系と呼ぶ。

コロイド粒子は固体の粒とは限らない。例えば牛乳やマヨネーズでは、油という液体の細かな粒が、水中に安定して分散している。サクサクのクッキーでは、気体の粒が、固体の中に分散している。空に浮かぶ雲だってコロイド分散系で、水の粒が、気体の中に分散している。

ゆでたパスタもコロイド分散系である。デンプンが糊化する過程については本のなかでくわしく書いたが、膨潤したデンプン粒は、アミロースが水分子が結合した形で、水中に安定して分散している。水中に分散しているというと、水のような液体を想像するかもしれないが、粘りが強いとコンニャクのように弾力がありつつ固まる状態になり、これをゲルと呼ぶ。ゆでたパスタ内のデンプンはゲルの状態になっているのだ。そしてパスタ表面のヌルヌルも、パスタから流出したデンプンのコロイド粒子、加えてデンプン粒が崩壊して出てきたアミロースなどが水分子と結合したコロイド分散系になっている。より濃度は薄いが、ゆで汁も同様である。

こんなふうにコロイド粒子のまわりに水分子がくっついた形のものを「親水コロイド」という。親水コロイドでは水分子がじゃまになって、コロイド粒子同士がくっついて大きな塊になることはない。逆に言えば、コロイド粒子から水分子を引き剥がしてやれば、粒子同士をくっつけて大きな塊にすることで、水から分離できる。

塩(塩化ナトリウム)を水に溶かすと、ナトリウムイオンと塩化イオンに分かれるが、これらのイオンは水分子と強く引き合うので、デンプンのコロイド粒子から水分子を奪い、デンプンを分離することができる。塩を入れれば、パスタ表面からヌルヌルを取り去ることができるわけだ。これが正しい意味での「塩析」なのである。

ただし、話は単純にはすすまない。もし親水コロイドから水分子をすべて剥ぎ取ろうと思えば、1リットルあたり5モル~10モルもの塩が必要になると計算できるからだ。じつに292・5~585グラムもの塩を入れる必要がある。20度の水1リットルには358.5グラムしか溶けず、モル沸点上昇を考えて107℃まで温度を上げても396グラムしか溶けない。

そういうわけで、ふつう、塩析は、飽和食塩水レベルのとびきり塩辛い塩水を使って、コロイド粒子同士を大きな塊にして沈殿させる。しかし、当然ながら、そんな塩水でゆでたパスタはいくらお湯で洗っても、しょっぱすぎて食べられない。すなわち、通常のゆで方をする限り、パスタと塩析は無関係と言えるだろう。

では、どうして、パスタをゆでるときに「塩析」が語られることになったのか? これが大きな疑問だったのだが、もう一度、上の記述を思い出してほしい。

"塩を水に溶かすと、ナトリウムイオンと塩化イオンに分かれるが、これらのイオンは水分子と強く引き合うので、デンプンのコロイド粒子から水分子を奪う"

『男のパスタ道』を読んだ方なら、これが、食塩水のイオンが、デンプン粒の糊化に必要な水分子を奪うのと同じ仕組みであることに気づくのではないか。もともと「塩析でパスタのコシが出る」などと書いた人は、もしかしたらこの糊化の抑制のことが言いたかったのかもしれない。その後「塩析」という言葉が一人歩きし、さまざまな記述につながったのではないだろうか。

「生パスタ風ペペロンチーノ」に使うパスタと塩の分量の訂正です!

 

いきなり訂正です。
P235の「生パスタ風ペペロンチーノ」のレシピ。「パスタは好みのものを使えばいい」とありますが、「好みのもの」だとちょっとまずいです。バリラのスパゲッティ(直径1.7ミリ)を使ってください。

もちろん他のパスタの多くでも美味しく作れるのですが、まず、麺の太さによって、ゆで時間が変わります。あたりまえですよね。この原稿を送ったのは校了日の前日、徹夜続きで朦朧として、うっかりしていました。

そしてさらに、低温乾燥&ブロンズダイスのパスタの一部を使った場合、このレシピだと、片栗粉でとろみをつけたように、ドロドロ、ネバネバのパスタができあがってしまうことがわかりました。

一般的に売られているイタリア産、日本産の、テフロンダイスのパスタならまず大丈夫だと思います。
トルコ産やチュニジア産はまだ試していないので、追ってご報告します。

ブロンズダイスでは、ディチェコ、ガロファロ、ヴォイエロ、KALDIで売られているモンスーロはOK。

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↑これはディチェコ、問題なく作れます

 

トスカーナのパスタ・マンチーニ、グラニャーノ村のラ・ファブリカ・デラ・パスタは、ドロドロ・ネバネバです。

 

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↑水に浸けたラ・ファブリカ・デラ・パスタのスパゲッティで作った生パスタ風ペペロンチーノはネバネバになります。


ブロンズダイスでもより工業的に作られているものは大丈夫で、より手工業的、小さな工房で作られているようなものはネバネバになりやすい傾向があります。

ネバネバになってしまうのは、パスタからたくさんデンプン粒が流出して、それが加熱されてとろみがついてしまうから。練りが甘いから、デンプン粒が流出しやすいのでしょう。

あと、手工業的な低温乾燥&ブロンズダイスのパスタは、水に漬けた段階で、吸水が非常に早く、1時間浸けただけでも、かなりやわらかくなってしまうものも多いです。

この本では、パスタを「高温乾燥&テフロンダイス」のパスタと「低温乾燥&ブロンズダイス」のパスタにざっくりと分けましたが、この結果を見ると、

1.高温乾燥&テフロンダイス
2.工業生産の低温乾燥&ブロンズダイス
3.小さなパスタ工房の昔ながらの低温乾燥&ブロンズダイス

の3つに分けたほうがいいのかも知れません。2と3は、おそらく練りの工程に大きな違いがあるのでしょう。3のパスタのなかには、しばらく水に浸けただけでドロドロになって溶けてしまいそうになるものもあります。一方のバリラは水に浸けるどころか、1時間ゆでても形を保ちますから、すごいものです。

このあたり、もう少し追求してみる必要がありそうです。

そしてこれはまったくのミスなのですが、P236の3行目、塩、2.5グラム、とありますが、これは塩1.5グラムに変えて下さい。同様にP233の5行目の塩の分量も1.5グラムに。

これでもしょっぱめだと思います。もともとこの本では、呑み会の締めに食べるラーメンのような、強めの味のペペロンチーノを想定しているのですが、「時短ペペロン」と「生パスタ風ペペロン」は、それを考慮に入れても、この分量だとさすがにしょっぱすぎです。

 

しょっぱいパスタを作ってしまった方、本当にすみません!

上記、重版がかかったら修正いたします。

『男のパスタ道』が発売となりました。

 

男のパスタ道 (日経プレミアシリーズ)

男のパスタ道 (日経プレミアシリーズ)

 

 

『男のパスタ道』、6月10日、いよいよ、明日発売です。都心の書店では本日夜から並んでいるところもあるようです。

このブログでは、本に追記したいことを書いたり、皆様からのフィードバックを頂いたりできればと思い、開設しました。

この本、なかなか書けずに苦しんだのですが、最終的には18万字ほども書き、4万字を削ることになりました。本書で説明しきれなかったことや、削ってしまったトピックなど、順次掲載していく予定です。

実は、もうすでに付け加えたいことや、少し訂正したいことなどもあり、それらを告知する場にもします。

 

また本で紹介できなかった、応用編のレシピは、第2弾目指して開発中の、他のパスタレシピも紹介していければ、と考えております。

 

みなさま、なにとぞよろしくお願いいたします。